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Note No.6

小説置場

階段

夏のセール旋風は、みつば商店街にも吹き荒れている。そこかしこで何割引きやら云%引きやら、はたまたスタンプ二倍キャンペーンが目に入る。活気づいているのはいいことだ、と思いつつ宥はダンボールの箱を抱えて歩いている。 どうせ戻った所でいいようにこ…

照鏡

幼い頃の、夢を見た。 祖母がまだ生きていて、しょっちゅうまとわりついていた頃のことだ。祖父のことも大好きだったけれど、小柄で上品な祖母のことが、僕は飛びぬけて大好きだったように思う。(おばあちゃん!) 幼稚園に入ったばかりの頃だろうか。園か…

賛歌

本当は、そんなに難しい話じゃないんだ。 「お前はすごいよな」だとか、「真似出来ない」だとか、そんなことを言われるのは初めてじゃなかった。思い返してみれば、記憶の中にその言葉はいくらでもあって、好きなように取り出せるほどだ。だから僕にとっては…

クラス委員のひとりごと

クラス委員の集まりに行ったら、前の席にタカが座っていた。隣の組のクラス委員が座るはずの席だったから、納得した。そうか、二組はタカがクラス委員なわけだ。「タカ」 背中をつついてから席に座ると、振り向いたタカが俺を認めて笑った。まだ全員の集まっ…

見つける

帰り道、近道しようと公園を通ったらすごくよく知った顔があった。泥だらけの制服を叩いていて、何があったのかはすぐわかる。思わず舌打ちしそうになってしまったのは仕方ない。「宥!」 声をかけて走り寄ると、「めぐか」とつぶやいてこっちを見る。大きな…

straight blue

思えば、最初にそれを意識したのがいつだったか、という記憶は驚くほどにはっきりしていた。 それまでは微塵も意識したことがなかったので、ありのままを受け入れただとか全てを丸ごと認めた、とかいうのとも違っていた。たとえば目は2つあって鼻は1つ、とい…

隠れ鬼

膝を抱えてうずくまっている。どきどき、心臓の音が響いているのは緊張しているからだ。前を行き来する見慣れた人影が、名前を呼ぶ声が、ここを見つけてしまわないか。上手く隠れていられるだろうか。心配だから鼓動が早い。 幸成は高鳴る鼓動を抑えながら、…

「こちら幸せ堂!」

あらすじ 商店街の一角にある「幸福堂」は、小さな骨董品店だった。しかし店主はすでに亡く、孫娘である少女が鍵を持っているものの、店はずいぶん前に閉められたままだった。けれどある日、それを知らない客人が店を訪れる。何やら訳ありの客人から品物を託…