Note No.6

小説置場

「Crossing Game」

Sternenlicht

壁にもたれて、空を見上げた。高層ビルに切り取られた夜空は、薄らと星が出ているようだ。はっきりとは見えないけれど、今日の天気は晴れだったはずだから一等星くらいは見えるだろうか。 ぼんやりそんなことを考えながら、すっかりぬるくなったコーヒーを飲…

地理・地名

ロフィラート神国 四つの島から成り立つ、古豪の国。歴史はあるが、あまり表舞台には登場しない。血の盟約を基にした神を戴く一神教。四つの島は非常に近接しており、橋による陸路が一般的。船を使った海路も存在するが、潮の関係上あまり航路として適しては…

マルボロ

小箱が空中高く放り上げられる。真っ直ぐ落ちてくると、初めからそうすることが決まっていたように、放り投げた人物の手へ収まった。人物――ライは、手の中の箱を何とも言えない顔で見つめていた。「ライ?」 しばらくぼんやりしていると、不意に声をかけられ…

僕に願う

「俺が由月に撃たれたのって何回くらい?」 突然問いかけられた由月は、綺麗な形をした眉を思い切りひそめた。いきなり何を言ってるんだコイツは、という顔である。しかし、それでも無駄に記憶力のいい由月は、するりと答えを出した。「本気で撃ったのなら3…

君の知らない、僕のこと。

分解したパーツを一つずつ掃除して、組み立てなおす。シリンダーは特に入念にチェックして、埃が入らないよう元の状態へ戻した。ジクロから譲り受けたH&Tは年代ものだから、定期的な手入れが必要だ。「はー…訳わからん」 椅子の背に顎を乗せてこちらを見てい…

青し

君のためには生きられない僕を、きっと君は笑うから。 「……由月?」 扉を開くと、出て行った時と微塵も変わらない姿勢のままで座っている由月が目に入る。筋肉一つ動かすことさえ自身に禁じているように見えて、ジクロは肩に手を置いた。「もう遅いでしょう…

動き出す世界

最初に見たのは柔和な老人で、次に目を醒ました時に見たのは同じくらいの年頃の少年だった。「…お?」 明るい茶色の髪に、同じ色の瞳。小さな鼻、健康的に光る頬、大きな口。尖った八重歯が見える。ぼんやりとそんなものを眺めていたら、眼の前の少年が満面…

幕間――世界一尊大で豪然な一族の主による独白

世界はいとも容易かった。いくつか複雑で面倒な部分もあったけれど(教会のヤツラとの話し合いとか貴族どもとの食事会とか!)、概ね俺にとって世界とはあくびが出るくらい楽だった。 何せ俺は生まれた時から、自分の力の使い方をよく知っていたし、それを使…

夜明け前

行き倒れの子どもを連れて行ったのは、気まぐれだとか何か展望があったからではない。単純に、食事の時間に遅れそうだったからだ。年端も行かないあの子は、何より食事が遅れることに癇癪を起こすのだと、ジクロはよく知っていた。 もっとも、同年代(に限ら…

塵芥

あれだけが、僕の唯一の後悔だ。 部屋の錠前は、定期的に配列が変わる11桁の数字の羅列だ。メインシステムに侵入して、その配列の順番を割り出すことは容易かった。何せ、彼らが自らそういう能力を伸ばせるよう、最大限の環境を与えてくれたのだから。 部屋…

「Crossing Game」

あらすじ その国は4つの島から成っている。全てを統括するのは大司祭であり、教会が国を治めている。いにしえの時代、教会が戴く神の御使いとして地上に遣わされた者たちは、血の契約者として人々を導いた。御使いたちの末裔は、今もなお健在である。彼らは…