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Note No.6

小説置場

ひかりみちる

難しいことはよくわからないのだけれど、光を調節する機能がうまく働かなくなっているのだという。ちゃんと調整出来ないから、光を痛いほどに感じてしまうらしい。だけどこれはまだ初期の段階―というより、まだまだ想定内のちょっとした誤作動であると先生は…

光をはなつ

まぶしいな、と湊は思った。カーテンを閉め忘れたまま眠りこけて、太陽が天辺まで昇ってしまって、だからこんなに光がきついのだろうか、と思いながらベッドからおりる。目をこすりながら壁の時計へ目をやるが、ぼんやりしていてよく見えない。時計の輪郭は…

Star dust

空の綺麗な夜だった。 夏期講習の帰り道、生温い空気を掻き分けながら自転車をこいでいた。授業の最後に出された数式の答えが、どうしても合わない。あっちこっちを引っくり返して、代入してみたけどいまいちわからない。帰ったらもう一回見直してみるか、と…

Milky way

星の綺麗な夜だった。 友人宅からの帰り道、煙草が吸いたくなって公園に立ち寄った。子どもたちが遊ぶ公園で煙草というものどうかとは思ったが、昨今歩き煙草への風当たりの強さは尋常ではない。公園に誰も人がいないことを確かめてから、土喜は公園へ入った…

MD

コピー機の説明を終えて戻ってきた泉は、夏暮が手に持っているものに目を止めた。手のひらに収まるほどの、四角い機械らしきもの。コードらしき黒いものがついているようだ。 レジの中に入ると、尋ねるより先に声をかけられる。店内にお客さんはいないのだし…

はさみ

神様は、どうして僕を殺してくれなかったんだろう。 頬を撫でた。血の気の失せた顔は真っ白で、作り物のようだった。やわらかくてあたたかだった体は、もうすっかり冷たくなっている。余計に人形のように思えるけど、こんなに美しい人形を僕は知らない。これ…

back-to-back

先生と日向は似ていると、思う。 社会科準備室で補習授業を受けている。というのも、この前の定期テストで赤点を取っちゃったから。元々得意じゃなかったけど、高校に入ってからはばっちり苦手に昇格した。あれ、こういう時って昇格でいいのかな。「ぼけっと…

崩れかけた階段を器用に登り、上層階へ到達する。上手くカモフラージュしている盗聴マイクに向けて、帰ったことと合い言葉を告げる。いくら戦闘大好き人間のセイだとしても、ホームで暴れ回ることは遠慮したかった。せっかく寝る場所も確保出来ているのだし…

ニューロン

さいごのけしきをおぼえている? 刺し込んだナイフをゆっくりと引き抜いた。丁寧に、きちんと肋骨を傷つけるように注意しながら。すらりと引き抜けば、支えを失った体が道路に転がった。裁貴は注意深く自分の体を点検して、返り血がついていないことを確認す…

Hymns

行きたい所があるのだと言う汝緒さんは、暗がりから決して動こうとしない。境内にある大木の傍に座り込んだままで、恐らくへらへらと笑っているのだろう。表情は見えないけれど、間違ってはいない。「……汝緒さん」「どうしたの、悠一くん」 朗らかな声だった…

深夜番組

昼休み、隣のクラスを訪れた基河聡司は、同じく演劇部部員である上郷雪音を呼び出した。貸したままになっていた、社会の資料集を返してもらうためである。「……なに」 不機嫌オーラを全開にして廊下に出てきた雪音が、顔に似ず低い声で用件を尋ねる。恐らく自…

ガードレール

内側から光を放つようだ、と思う。いやもしかしたら、本当に光っているのかも。私自身は何も変わっていないつもりだけど、目の構造が知らない内に変化していて、内側から放つ光を目に映せるようになったのかもしれない。 白く滑らかな肌は、陶器のようなすべ…

柔らかい殻

夏が来るよ。 終業式まで後二日、という頃だ。中間テストも終わったし、もう夏休みを待つだけ! という気分で学校中が満ちていた。うちのクラス仲は悪くないというより良い方だから、放課後暇な子たちがだらだらと話しながら帰っていた。 ムードメーカーの男…

トランキライザー

住宅街の一角にある、何の変哲もない家だった。市役所から車で十分ほど行った先にあるのは、新しく家を買う若い夫婦のために用意されたような、ありふれた家の群れ。建売にしてはデザイン度が高く、同じような家が並んでいないことだけが唯一の着目点と言え…

釣りをするひと

しゃわしゃわと、蝉の声が降って来る。まだらに落ちる光の模様を眺めながら、ペダルを踏む足に力を込めた。汗が顎から滴って落ちていく。自分の息の音が聞こえる。蝉の声が耳の奥で鳴るみたいだ。緑を挟んでいるといっても、太陽の威力は充分だった。どうし…

クレヨン

懐かしい、と声をあげたのはこもちゃんだった。私とこなみは、こもちゃんの手元をのぞきこむ。するとそこにあったのは、薄汚れた四角い箱。一体なんだろう、と思ったらこなみが嬉しそうに言った。「あ。もしかして、クレヨン?」「そうそう」 言われてもう一…

Others.

トロイカ【troika】 柚原智希(ゆずはら・ともき)三上尚哉(みかみ・なおや)日向将之(ひゅうが・まさゆき)新堂恭市(しんどう・きょういち)藤巻隆司(ふじまき・たかし)新堂厚志(しんどう・あつし) Junking Party 貝谷由依(かいたに・ゆえ)濱下幸…

「鈴原家の人々」

あらすじ 鈴原神社の五人息子は、近所で地味に有名人である。自由奔放・暴君タイプの長男に、面倒見の良いしっかり者の次男、野球に情熱を注ぐガキ大将三男、年齢とはかけ離れた落ち着きを持つ四男に、ちゃっかり者で甘え上手の五男。両親がいないながらも仲…

「夜の鬼ごっこ」

あらすじ 中島四兄弟は基本的に放任主義だが、一つだけ決められていることがある。それは、進学する大学が決められていること。年子の四人がめでたく同じ大学に在籍することになったその年、兄弟には一つの使命が課された。夜の大学で仮面を着用し、謎の集団…

「Oh,my sweet home!」

あらすじ 家の仕事は何でもコンピューターがやってくれる世界で、少年は日々を過ごしている。変わりばえのしない毎日の中、近所の変人――家にコンピューターを入れず、何でも自分で行っている――の家へ遊びに行くことだけが唯一の楽しみだった。そんな中、突如…

「冬の日」

あらすじ むーちゃんが死んだ。よく晴れた、冬の日に――。 従兄弟が自殺した。それだけでも衝撃だったが、さらなる衝撃は、同じ日に自殺した人間は従兄弟以外に54人――従兄弟を入れて55人いたことだった。”これからの社会に希望を見出せないので、生きていても…

「地平の門」

あらすじ 新進気鋭で将来有望とされるが、未だ代表作のない若手映画監督。その友人で、脚本を手掛けているものの、ほとんど採用されることのない脚本家。二人が大学時代からあたためていた作品の撮影が始まったことから、物語は動き出す。二人が集めた出演者…

「もしも、あしたが。」

あらすじ ある朝駅のホームで電車を待っていると、突然手を引かれた。見れば、美少年が「僕と一緒に逃げてください」と告げる。なし崩し的に逃避行に巻き込まれた少女は、少年と共に何でもない時間を過ごすはずだった。買い物をしてご飯を食べて、他愛ない話…

「嵯原高校文系選択クラス」

あらすじ 理数系で突出した生徒が多いことで有名な、県立嵯原高校。理数系の生徒を伸ばすべく、入学時に文理選択がある。その内、一クラスしか存在しない文系選択クラスの物語。放課後だったり授業中だったり帰り道だったり――。日常の中の些細なひとこま、ど…

「星をつなぐ」

あらすじ 公立高校の美術部に籍を置く少年は、日々を何の事件もなく過ごしていた。授業を受け、家に帰り、また学校にやって来る。けれど、部活動の一環として地域の美術教室との交流を始めたことから、隠していた少年の才能が少しずつ露見していく。絵を描か…

「祝祭の庭で」

あらすじ その島は、古くから「人形島」と呼ばれている。島の住人たちが作る繊細な人形も所以の一つではあるが、最大の理由は、生きた“人形”が生まれるからだった。島では、数年に一度、災厄と不運を他者の代わりに引き受け、身代わりになる存在である「ヒト…

「何でもない日」

あらすじ 近未来の地球。一度滅びかけた人類が、少しずつ人口を増やし、安定し出した頃。様々な共同体が作られ始め、再びの争いを恐れた人々は、一つの決断を下した。巨大な宇宙船を一つの学校とし、それぞれの共同体からランダムに生徒を選び出し、集めるこ…

「夢屋便利堂」

あらすじ ある日少年が、神社の息子であるクラスメイトの家を尋ねると、不思議な場所に取り込まれてしまった。そこは一見コンビニのように見えるが、実は夢を扱う店であった。不思議な双子の店主と、従業員のお狐さま、それらと違和感なく付き合えるクラスメ…

「あかいいと。」

あらすじ 中学校三年生。芸術鑑賞教育の一環で訪れた美術館で銃を手にした男によってクラスメイトが殺される。最後に残った少女は「どんな風に死にたいか?」と問いかけられる。脳みそをぶちまけ、内臓をまき散らして死んだクラスメイトたちを見て、少女は答…

「東京ゼロ区」

あらすじ 近未来の日本。深く暗い森の奥、廃墟に囲まれ、鉄条網が張り巡らされた場所に、それはある。かつて首都として東京と呼ばれたその場所は、誰も彼もから忘れ去られても、文明から取り残されても、それでも確かに息づいていた。何でもありの無法地帯・…

「聖者の行進」

あらすじ 血のつながらない兄弟たちは、人殺しとして育てられた。父親が望めば、どんな人間でも殺した。ためらいもなく、命じられるままに、誰であろうと殺した。一方で普通の学校生活も送っていたが、同級生の殺害を命じられたことから、歯車は回り出す。「…

「まひるのほし」

あらすじ 世界に愛想を尽かした少年は、ある夜日の光を浴びられない青年に出会う。その人は、真夏の太陽が照りつける中で殺されかけたことがあり、それ以来光の下に出ることが出来なくなったという。青年はあれほど焦がれた世界に生きているのに、それを拒絶…

「春宵一刻値千金!」

あらすじ 旧家の分家の血筋である演劇部部長は、本家とのいざこざが絶えない生活を送っている。普段は喧しく奇天烈な言動を繰り返しているが、息苦しさに耐えかねなくなった時、彼は部員に招集をかける。それを知っている部員たちは、文句を言いながらも毎回…

「フェアウェル」

あらすじ 通り魔に襲われて、一人の少女が死んだ。彼女は辛く苦しいこの世界から、消えてなくなりたかった。それゆえ、”非のない被害者”として願いを三つ叶える、と言われても何も見つからない。天使にむりやり現世に送られ、願いを探すよう命じられるが、そ…

「フル・ムーン・ザ・ナイト」

あらすじ あの輝かしい夏の日に、私たちの世界は美しく壊れた。*あの夏の日。二人は、二人にとって世界そのものであり、唯一の神様であった存在を守るため、それを脅かす父親を殺した。それでも壊れなくて済んだのは、幼い二人がその罪を分けてきたから。そ…

「かごめかごめ」

あらすじ 神憑きが生まれる街、真封市。他との関わりを極力閉ざし、外へ出る人間を少なくするため、恐ろしいほど諸々の設備が整っている。神憑きたちは強大な力を持ち、政治の中枢にまで影響を及ぼすことが出来る。しかし、力はあまりに強く他者を傷つけ、神…

「友情同盟」

あらすじ 部活に無所属という縁から、何となく仲良くなった中学生の三人。変人と噂されるけれど本人たちにその気はない。病院に忍び込んで怒られたり、先生たちに目をつけられたりしても、三人は変わらない。濃霧に覆われ始めた東京でも、変わらず日々を過ご…

「グフィラ・ナーガ」

あらすじ 平凡な日々を送っていた小学校五年生の少女たちが、異世界からの使者と出会い、世界を救うために魔物(的なもの)と戦い、グフィラ・ナーガという異世界へ旅立つ。 登場人物 小元地恵(こもと・ちえ):こもちゃん斎木水紗(さいき・みさ):みーさ…