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Note No.6

小説置場

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「こちら幸せ堂!」

 帰り道、近道しようと公園を通ったらすごくよく知った顔があった。泥だらけの制服を叩いていて、何があったのかはすぐわかる。思わず舌打ちしそうになってしまったのは仕方ない。
「宥!」
 声をかけて走り寄ると、「めぐか」とつぶやいてこっちを見る。大きな怪我はないようだ。
「またやられたの? 懲りないね」
「まあ、そこまで酷くはない」
「そりゃ。やりすぎちゃったらマズイからでしょ」
 宥は幼稚園の頃から敵の多いタイプだったと思う。
 群れることを嫌い、一人を好む。集団行動に向いてないし、空気読まないし、一人だけ別方向に向かっていこうとする。それでいて、びくびくした所は全然ない。クラスのボスに取り入ろうとしたり、顔色をうかがったりするなら可愛いモンだと思われるかもしれないけど、そんな気配全然ない。それ所か、一人きりでいることが全然辛くないのだ。それはもう、遠くから見ててもわかるくらい。そういう所が気に食わない、と5、6年生の時からよく言われていたわけで。
「あんたいじめたら、宗兄来ちゃうもん」
 入れ違いに中学を卒業した宗兄や静兄、うちのお兄ちゃんはその辺りをよくわかっていた。しっかりと後輩に釘を刺して行ったのだ。
 宥だけじゃなく、私たちのことも入ってたんだろうと思うけど。やっぱりお兄ちゃんたちの心配は宥のことが一番だっただろう。性格的に危ない、というのもあるけど、宥にはものすごく分かりやすい特徴があるから。「外見が異質なものは迫害されやすいんだよ」って宗兄はイタズラっぽく笑っていた。確かに宥は見ただけですぐにわかるくらい、あざやかな青い目をしている。
「あんたももう少し性格に可愛げあればいいのに」
 呆れた顔で言うけれど、宥は「別に困ってない」と答えるだけだった。絡まれたりどつかれたりしてどこが困ってないんだか、と言いたいけど、宥はたぶん本気で困っていないのだ。もっとヤバイことされたらさすがに考えるかもしれないけど、これくらいなら宥はどうだっていい。
「じゃあ、宗兄に言ってない?」
「当然」
 どうして言わなくちゃいけないんだ、という顔をされた。まあ確かに、これくらいなら宗兄も気づかないだろうけど。
「だからめぐも言わなくていいから」
「ん、まあこれくらいならいいけど――もっと酷くなったら勝手にやるから」
 小突かれるくらいでもあたしとしては犯人を吊し上げたい所なのだけれど。一応今の所、そこまでマズイ状況ではないみたいだし、宥本人がガチで気にしてないからいいってことにしておく。
「うん、それで頼む」
「オッケー。でも、他の人も駄目なわけ?」
 尋ねると、宥がこっくりとうなずいた。他の人、というのは主に商店街メンバーになるわけで、それはつまりお兄ちゃんたちとかも入っているんだけど、今はそれを除外している。あたしが言っているのは、同学年の他二人。幼馴染というヤツで、知らないことはほとんどないし、何を聞かされたってきっと驚かない。それくらいの人間だし、一応知っててもいいんじゃ、という気もしたのに。
「ユキは心配しすぎる。気苦労かけるからいい」
「ああ…まあ、そうか」
 きっぱりと宥が言うので、それもそうか、と思い直した。勉強も運動も出来るし、顔もいいし性格も真っ当だし、色々パーフェクトっぽいユキだけど。要領のよさっていうより、努力の賜物だということはよく知っていた。そんなユキにあんまり多くの荷物背負わせるのも何だかなぁ、という気がするのはわかる。
「タカはいいんじゃない?」
 もう一人を思い浮かべて言うけど、宥が首を振った。重々しく「タカは何するか予想がつかないんだ」とつぶやくから。思わずうなずいてしまった。
 基本的に優等生のはずの幼馴染だ。実際人当たりも良くて、教師の信頼も厚い。勉強も出来るし、運動神経も悪くない。上手く人を仕切れるし、人の意見もきちんと聞く。優等生のはずだけど、ちょっと人より手が早かった。
「…そういえばこの前、サッカー部に飛び蹴りかましてたわー…」
 何事かと思ったら、練習中のあたしにボールを当てておいて謝罪がなかった、という理由だった。うん、確かにタカなら何をやるか予想がつかない。
「…じゃあ、見つけたのがあたしでよかったんじゃない?」
 へら、と笑って言ってみた。宥はものすごく真剣な顔で「まったくそう思う」と答えた。