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Note No.6

小説置場

白い華+火葬前夜祭

短編・SS

 あなたのために花を摘もう。月に照らされた花の群れの中で、一際輝く白い花がいい。明日には雲となり星となるあなたには、それが一番ふさわしい。
 静かに草の海に入り、畝を進んで美しい花を選ぶ。大輪の花がいいけれど、大きすぎてはいけない。重くて垂れ下がる花はあなたに似合わない。大きくとも品を失わず、重なった花弁は可憐であっても、毒々しくてはならない。月の光を受けたような、真白に染まった花を選んだ。手を伸ばしてその花を手折ろうとするけれど、茎には鋭利な棘が身を守っている。それでも強く力を込めると、指先に鋭い痛みが走った。反射的に指を外して見ると、ぷっくりと血の玉が浮き上がってくる。重力へ従うように、下へと落ちていく。
 あなたのために摘む花を、やさしく手折った。一つだけでは足りないから、人の頭ほどあるその花を、丁寧に、抱きかかえるようにして腕の中に積んで行く。指先は真っ赤に染まり、ぬらぬらと滴るけれどこの花は潔癖で真白いままだ。棘だらけの茎で腕からは血が流れ、このてのひらは真っ赤だけれど、あなたにふさわしい花は清楚なままでたたずんでいる。月の光に透かしてみれば、きらきらとそれを受けて、静かに輝くのだろう。
 この花はあなたにふさわしい。誰よりも清潔で、汚いことなど無縁だった。華やかにほほえむのではなく、目も眩むほど強い光を発するわけではなかった。それでも、確かな存在感を持って、いつだって真白に笑っていたあなたには、この花を捧げよう。
 明日にあなたは、あの白い光になる。星となってこの世界を見下ろし、月となって世界を包み、太陽となって全てを照らし出す。明日になれば旅立ってしまうあなたへ、この花を捧げるのだ。
 血まみれになったわたしだけれど、血だらけのわたしに摘まれた花だけれど、あなたへたむけることを許して欲しい。
 明日には灰になるあなたへ、血に濡れたわたしからの、最後の贈り物を。

 

Title:「夜風にまたがるニルバーナ」