Note No.6

小説置場

Dear mine

 あなたは俺の、宝物です。

 とても大切なことを言うから、ちゃんと聞いてほしい。柄にもないことだけど、どうか笑わないでください。自分らしくはないとは確かに俺も思うけど、本当に心の底から思ってることだから。
 いいかな。照れ臭いけど、本当に思ってることだからきちんと言うよ。あなたはね、俺にとって、この上もない宝物です。
 いきなり何を言ってるのかって、驚いてるかもしれない。本当に柄にもない言葉だから面食らってるかもしれない。俺だって、まさか自分がこんなことを言うとは思っていなかった。だけど、これは本当なんだ。本当に、本気で思ってるんだよ。あなたのことを、俺は心から宝物のように思ってる。
 あなたは俺の宝物なんだ。いくら繰り返してもいい。心から思ってることだから、これだけはちゃんと伝えたい。
 あなたはたぶん、「そんなことない」って言うと思う。何というか、本当に謙虚で、そういう所は奥ゆかしい。ツッコミは厳しいのに。時々、やたら辛辣に俺に当たるくせに。なのに、あなたはこういう時だけ「そんなことない」って首を振る。それは大体予想が出来る。
 あなたはいつだって、自分の価値を疑ってるんだ。あなたの話は聞いているから、どうやって今まで生きてきたのかは知ってる。今まで、本気で思っていたことを知ってるよ。あなたはずっと、自分のことを価値のない人間だと信じてきた。気がついた時にはそれが当たり前だったから、特に気にすることもなくそう思ってきた。そして、対価を支払わなければ存在は許されないと信じて、ずっと実行してきた。それを俺は、どうしようもなくもどかしく思う。
 もっと早く、あなたの近くにいたかったと思う。俺の性格から考えて、そんなにすぐに近づいて心を開くことなんて出来ないのはわかってるけどね。だけど、思ったのは本当なんだ。もっと早くあなたの前に現れて、何てことない雑談を出来るようになって、少しずつ心を開いて、そうしてあなたに言ってやれる人間になりたかった。あなたの、その悲しい信念を打ち砕く存在になりたかった。
「あなたは俺の宝物だ!」って、大きな声で言える人でいたかったよ。そうしたら、あなたはきっと、今よりもっと前に、人生を軽やかに生きていけたと思うから。
 あり得ない仮定だってことはわかってる。どう頑張っても過去は取り戻せないことも。それでも、願いたかったことは伝えておきたい。あなたの心が、もっとずっと安らかでいてほしい、と俺は心の底から願っているんだよ。
 でも、それが叶わないことは充分知っている。そうしてあなたは生きて来て、それから俺と出会ったわけだし。だから、今の俺はきちんと言う。繰り返して伝える。あなたは俺の宝物なんだって。
 信じられない? まあ、そうだろうなとは思う。あなたの性格からして、そう簡単に受け取れはしないだろうってわかってたから。それなら何度だって言うしかないでしょう。あなたは俺にとって、この上もない宝物なんだって。
 あなたほど心の美しい人を、俺は他に知らない。確かにツッコミは厳しいし、実は結構口は悪いし、もちろん悪態も吐くし、天使のような人間だと思ってるわけじゃないよ。純真無垢かっていうとどうかと思うし。正直、わりとあくどいなって思うこともあるし。だけど、そういうことじゃなくて、あなたはとても心の美しい人だと思うんだよ。
 どう伝えたらいいだろう。あなたの心はとてもやわらかくて、もろく傷つきやすい。自分でも言ってたけど、些細なことに動揺して、すぐに凹んだり落ち込んだりして忙しいよね。それは確かに事実だし、その通りだと思う。それでも、あなたはそれを恥じたりしない。困ったみたいな顔はするけど、確かに面倒だなぁって顔はするけど、卑下することも恥じることもしない。その姿を、俺はとても美しいと思う。