Note No.6

小説置場

ミルクティーとコーヒー

「僕らはどうして出会ったんだろうね?」
 首をかしげてお前はつぶやいた。色素の薄い髪がさらり、と頬にかかった。
 こんな風に、と俺と自分を指すとはにかんで笑う。俺も曖昧な笑みを返した。お前はその顔を維持したままで目の前のカップに口をつける。
「君を見つけたとき、僕は快哉を叫ぶ所だった」
「俺もだ」
 この店自慢の甘ったるいミルクティーを口に含み、満足そうにうなずく。甘い物が好きな所もまったくもって変わらない。
「君にも記憶があると知った時、卒倒しなかった自分を褒めてやりたい」
「俺もだ」
 苦笑を浮かべながら同意する。記憶に対して否定ではなく肯定が返ってきた時、まず聞き違いだろうと思った。次に勘違いだと思い、その次は夢だと思った。それでも答えは変わらず、紛れもない現実だと理解した時、よくぞ正気を保っていられたものだ。
「だけど、ねえ、思わなかった?」
 俺の飲むコーヒーのような、深い茶の瞳がのぞきこむ。カップを置いた俺は、真っ直ぐと見つめ返す。
 記憶の姿と二重映しになるその顔、表情。着ている服は違っているが、せいぜいそれくらいだ。泣いた顔も怒り方も、笑った時の目じりのしわもみんな知っていた。生まれる前から知っていた。
「僕の人生は、“彼”が人生をやり直すためにあるのだろうか? って」
 お前は笑顔を浮かべる。けれどそれはうまくいかない。眉根が寄り、瞳は濡れてゆらゆらと光っている。笑っていてほしい、と思うのが俺の感情なのかアイツの気持ちなのかはわからなかった。
「何度も思った」
 ゆっくりと答える。俺のようで俺ではない人間の記憶。見覚えもないはずなのに確かに知っている風景や人。恐ろしくなかったとは言わない。それでも。
「それでも、お前と一緒にいることが“俺”のこの上ない幸福なんだよ」
 理由も原因も要らない。それがアイツのものだとしても、同じくらいにこれは俺の感情だ。だって、お前がいるってだけでこんなに嬉しくなる。
「どうして出会ったのかなんて簡単だ」
 お前の目を見て、はっきり言い切る。
「幸せになるためだ」