Note No.6

小説置場

2016-07-01から1日間の記事一覧

光って消える、ただそれだけと知りながら

最後の花火が終わってから、隣で一緒に眺めていた秀人を見ればきらきらと顔を輝かせていた。視線に気づいたのか千歳の方を向くと、にこーっと笑った。「終わっちゃったー!」 すごかったなッと言うとばしばし背中を叩く。木の上という不安定な体勢を全く気に…

100年後の話だってしますよ

「秀人合流したって」 通話を終えた千歳が言うと、栄介が「これで心配はなくなったねえ」と続けた。他の二人が真顔でうなずくのを見ながら、千歳は苦笑いをした。本当にあいつ信用ねーなぁ。まあ、仕方ないか。「よしよし。じゃあ、秀人がこっち来る前に、揚…

きいろい

人身事故に巻き込まれながらも振り替え輸送を使って、どうにか目的の駅まで辿り着いた。史哉は大きく息を吐きながら、混雑した人混みをどうにかすり抜けて改札機を通った。仕方ないけれど酷い目にあった。ちらり、と後ろへ目をやれば小さな頭がひょこひょこ…

君待ち

集合時間よりも十分ほど早く着いたがすでに先客が居て、亜伊は心の中で舌をまいた。さすがというか何というか。駅のコンコースにある太い柱を背にして、もたれかかることなく直立不動で立ったまま遠くを見ている横顔に、軽い調子で声をかけた。「早いな、悟…

せんせい、あのね。

あなたも教師なのですか? ああ、すみません。先ほど「先生またねー」と言われている所を目撃したものですからそうなのかと。 小学校の教諭をしてらっしゃる? なるほど、言われてみるとこれほど納得出来る職業はありませんね。あなたにはきっとぴったりでし…

まばゆしければ

ガードレールに腰かけたままで夜空を見上げた千歳は目を細めた。ビルの合間から、真っ黒な夜にぽっかり開いた穴のような満月が出ている。ちかちかと光る電飾や、ネオンの看板に比べれば控え目な光であると思った。だけれど眩しくて、千歳は目を細める。「次…

遠し日

(田崎栄介と榮信の話) 寺が焼けるのは早かった。炎の照り返しで顔面が熱い。夜空にちらちらと舞う火の粉を眺めながら、今夜は月が綺麗だなと思った。 両親と、兄の遺体は炎に焼き尽くされて炭になってしまったらしい。遺骨は戻ってこなかったが、戻ってき…

くるくるり

ざわめく駅の構内を歩きながら、のんびりと周りを見渡した。改札を出た所にある竹姫の壁画は抽象的ではあるものの、何が描いてあるのかははっきりとわかる。何だか綺麗に脚色されてはいるけれど、少なくとも300年前はそんなものではなかった。 月の夜、障子…