Note No.6

小説置場

2016-07-04から1日間の記事一覧

砂塵の月

風が舞って、砂を空へと連れてゆく。覆った口布がはためいて、口の中に砂が入る。ぽたりと汗が滴って砂地に染みを作った所で、息が上がっていたことに気づいた。ぼんやりと砂の行方を眺めていたら、ぽっかりと出ていた満月が目に入る。 日が沈んでもじりじり…

冴ゆる

遠くに霞む、澄んだ記憶。 (とうさん、) 小さく呼ぶのは俺の声。青白い世界に沈んでしまいそうな父さんの背中を追いかけている。確かに叫んでいるはずなのに、音は俺の耳にさえ届かない。大きく息を吸うと、冷たい空気が肺に入り込んで咳をした。空気をみ…

雪晴

辺り一面雪に覆われて、青白い世界だった。音を吸い込んでしまった中、ぎゅ、ぎゅ、と雪を踏みしめる感触だけが足裏から伝わってくる。幸い降りやんでいたから、視界ははっきりとしている。時折木々から落ちる雪が降りかかってくるけれどそれくらいで、行く…

「凛乎葬送」

あらすじ 村里外れた場所に、その人はたった一人で住んでいる。白張を身にまとい、ただ独り時を過ごし、死者を送ることを生業としている。死穢を引き受け、常に死と向き合う役目を負う彼は、誰より強く他者と触れ合うことを望みながら、その役目ゆえ誰より他…