Note No.6

小説置場

2016-07-06から1日間の記事一覧

「緑の雨が降る頃に」

あらすじ 2058年。少年は、去年起きた事件の夢にうなされている。目撃したものの意味を知りながら、見捨てて逃げたから――。従兄弟の少女が何者かに狙われ始めたことをきっかけに、7年前に失踪した姉の部屋から発見された手紙から、少年は自分たちが遺伝子操…

愁へば

一歳年上のこの人は天才じゃないか、と思う時がある。今までに何度かその機会はあったが、まさしくこの瞬間、ロクショウはつくづく思っている。――どうしてこの人は、こうもぽんぽん心配の種を拾ってこられるんだよ。「どうしよう、ロクくん」 いつもの通りに…

再会の宴

乾杯の音頭は、この集まりを取り仕切っている平市――トクサだった。朗らかな笑顔で手にしたグラスを掲げ、「かんぱーい」と告げる。それぞれが思い思いに、声に合わせてグラスを持ち上げた。「久しぶりっ!」嬉々とした顔でかちん、と高らかに鳴らしたのは寿…

千代に

途方もない願いだなんて、わかっちゃいるけど。 風呂上りに渡り廊下を歩いていたら、中庭の方でうごめく人影を発見。夜闇に目を凝らしてみると、自動販売機の明かりに照らされた横顔に見覚えがあった。まあ、見間違いかもしれないけど、声をかけて何かが減る…

装う

袖を通すと、しんと気持ちが落ち着くのがわかった。襟を合わせて、帯紐を締める。袴をはいて、結わいてもらえば完了だ。きつく締め上げる度に、余計なものが絞り出されていくような感覚がある。 ただまっさらに、私という存在だけが残る。飾りもなければ、期…

「Operetta!!」

あらすじ とある私立高校には連綿と続くしきたりがあった。それは、古くから伝えられてきた「物語」の登場人物を在校生から選出し、役を演じさせるというもの。一つの役を与えられた少女を軸に、同じ立場の「役者」たち、維持に奔走する生徒会や教師たち、周…

晦冥に沈む

後悔ばかりの人生だ。 一つ深呼吸をして、ペンを机に置いた。明日の予習はもう終わっていたから、余裕を見て来週の分にも手をつけていた。それも目処がついたし、夜も遅くなっている。明日も学校があるのだし、もう寝た方がいいのだろう。明日の朝、眠くなっ…

うつくしい、せかい。

それだけが、それだけが、せかいのすべて。 息苦しくも美しいこの世界でどうにか生きてゆくための術を、俺はいつの間にか持っていた。誰かに言われる前から知っていたように思う。息の仕方を時々忘れる俺は、代わりに絵筆を与えられたのだ。呼吸すらもままな…

「木の下闇で待ち合わせ」

あらすじ 従兄弟が死んだ。18歳で殺された。生きている従兄弟の最後の目撃者であり、息苦しい親戚の集まりの中で唯一、安らぐことの出来た存在であったことから、少年は犯人捜しを決意する。少しずつ捜査を進めていく内に協力者の少女も現れるが、犯人捜しは…

at home

心底呆れた顔をしたささめは、重苦しい息を吐いてからつぶやいた。「トリ、あんたほんとに頭悪いのね」と。言われた張本人――カトリは、やけに真面目な顔をして答えを返す。「うん。俺、ほんとに頭悪いんだよね」「開き直るんじゃないわよ」 持っていた鉛筆の…

Lecture1

「天秤を思い浮かべていただければよろしいのです」 丸い眼鏡をかけた講師は、そう言うと講義室を見渡した。今までずっとモニターしか見つめていなかったのに、いきなりそんなことをするものだから、ばっちり目が合ってしまった。ぼんやりとしていたことがバ…

「 螺旋の果てで君を待つ」

あらすじ 時空間の移動が可能になった近未来。時空管制局は「何事も起こらない」よう、時の流れを監視している。管制局からの任務で、20世紀末の日本へ送られたのは3人編成のチームだった。担当年代の風俗に詳しく、生活になじめるよう取り計らうコーディネ…

照鏡

幼い頃の、夢を見た。 祖母がまだ生きていて、しょっちゅうまとわりついていた頃のことだ。祖父のことも大好きだったけれど、小柄で上品な祖母のことが、僕は飛びぬけて大好きだったように思う。(おばあちゃん!) 幼稚園に入ったばかりの頃だろうか。園か…

賛歌

本当は、そんなに難しい話じゃないんだ。 「お前はすごいよな」だとか、「真似出来ない」だとか、そんなことを言われるのは初めてじゃなかった。思い返してみれば、記憶の中にその言葉はいくらでもあって、好きなように取り出せるほどだ。だから僕にとっては…

クラス委員のひとりごと

クラス委員の集まりに行ったら、前の席にタカが座っていた。隣の組のクラス委員が座るはずの席だったから、納得した。そうか、二組はタカがクラス委員なわけだ。「タカ」 背中をつついてから席に座ると、振り向いたタカが俺を認めて笑った。まだ全員の集まっ…

見つける

帰り道、近道しようと公園を通ったらすごくよく知った顔があった。泥だらけの制服を叩いていて、何があったのかはすぐわかる。思わず舌打ちしそうになってしまったのは仕方ない。「宥!」 声をかけて走り寄ると、「めぐか」とつぶやいてこっちを見る。大きな…

straight blue

思えば、最初にそれを意識したのがいつだったか、という記憶は驚くほどにはっきりしていた。 それまでは微塵も意識したことがなかったので、ありのままを受け入れただとか全てを丸ごと認めた、とかいうのとも違っていた。たとえば目は2つあって鼻は1つ、とい…

隠れ鬼

膝を抱えてうずくまっている。どきどき、心臓の音が響いているのは緊張しているからだ。前を行き来する見慣れた人影が、名前を呼ぶ声が、ここを見つけてしまわないか。上手く隠れていられるだろうか。心配だから鼓動が早い。 幸成は高鳴る鼓動を抑えながら、…

「こちら幸せ堂!」

あらすじ 商店街の一角にある「幸福堂」は、小さな骨董品店だった。しかし店主はすでに亡く、孫娘である少女が鍵を持っているものの、店はずいぶん前に閉められたままだった。けれどある日、それを知らない客人が店を訪れる。何やら訳ありの客人から品物を託…