Note No.6

小説置場

2016-07-22から1日間の記事一覧

Freely and actively

至って普通の顔でトランプを出しながら「そういえば」と口を開いたのはマサヒロだった。「そういえば、今度の終業式どうするよ?」という声にかぶるように、タムは「よん!」と叫びながらトランプの山に札をくわえる。「……やっぱり時期的に肝試しとかいいん…

ひかり、ちる

しゃわしゃとホースから水を出しながら、周りの草木に水を蒔く。麦わら帽子の下の顔は、この暑さにも関わらずまったく焼けることはない。それどころか、彼の顔や手足、腕だけは降り積もった雪のように白く澄んでいた。「あ、こんにちはー!」 しかし、弾ける…

白い華+火葬前夜祭

あなたのために花を摘もう。月に照らされた花の群れの中で、一際輝く白い花がいい。明日には雲となり星となるあなたには、それが一番ふさわしい。 静かに草の海に入り、畝を進んで美しい花を選ぶ。大輪の花がいいけれど、大きすぎてはいけない。重くて垂れ下…

祈り方なんて疾うに忘れてしまいました

黒い傘を差しながら、小太郎はぼんやりと空を見上げている。重い雲から落ちてくる雨粒は、顔にあたって跳ね返り、アスファルトへと落ちていく。小太郎はただ無言で雨を受けている。このままだとぐしょぐしょになるのだと知っていたけれど、それは今さらだろ…

斎主

父が凶刃に斃れた瞬間、その目に宿ったのは悲しみでも憎しみでもなかった。夜具も畳も襖も真っ赤に染まり、行灯の火でぬらぬらと光っていた。賊は真っ直ぐと刃を向け、「恨むならこの時代を恨め」と、冷淡な声で切り捨てる。 静貴は昨日まで忠臣であった賊へ…

Hello, my world!

「準備は出来たかい?」 突然ノエルが扉を開けて入ってきたので、アークは慌てて席を立った。封筒は背中に隠し、「勝手に入るなって!」と言いながら廊下へ押し戻す。どさくさに紛れて封筒をポケットに入れてから、自分もノエルに続いて廊下へ出る。階段を下…

Dream a night!

長くて急な石段を登り、大きな門構えの神社正面に辿り着く。細かい彫りが施された賽銭箱の横手に、なだらかな石段があることに気づいた。こっちの方が楽だったよなぁ、と思いながら賽銭箱を丹念に見ている竜彦とミーコさんへ視線をやると、竜彦が熱心にミー…

さよなら、マイヒーロー

こわいゆめ を みた よ 目を開いて見えるのは暗い天井だった。続いて聞こえる荒い呼吸音が自分のものだと気づいて、思わず自嘲の笑みが浮かぶ。案の定、ぐっしょりと汗をかいていて気持ちが悪い。 起き上がり、前髪をかきあげる。大きく深呼吸をして呼吸をと…

オリオンの使者

草の間に座り込み、膝を抱えている。遠くで車が通り過ぎていって、ヘッドライトが暗闇を切り裂いて移動する。眩しい光に目がくらみ、そんなに近い場所ではないのにこんな風に射すくめられるとは、光速って伊達じゃないな、とぼんやりと考えていた。 空を見上…

ひこうきぐも の ゆくえ

濡れたアスファルトの上を歩く。さっきまで降っていた雨は上がり、嘘のように晴れている。雲は多少残っているけど、それくらいで丁度いい。これで雲もどっかに行ってしまったら太陽が常に直で出ていることになる。それは避けたい。今日は一日中雨だと思った…

ヒナコさんといっしょ。

わたしの傍には、いつもヒナコさんがいる。 より正確に言うならば、傍というのは左肩の後ろだし、いるとは言っても明確に見たことはないから、いるのだろう、とかもしかしたらいるのかも、とかそういうレベルだ。わたしや、わたしの周りの人間――家族、友人、…